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勝源院の逆ガシワ -岩手県紫波町-

 岩手県は東北地方の巨人であり、訪れて楽しい県である。面積が大きいだけでなく、西部には脊梁をなす奥羽山脈、中央部のやや西よりには南流する北上川沿いに展開する北上盆地、そしてスケールの大きな北上高地、その東縁は三陸海岸となっており、変化に富んでいる。今年は震災からの復興だけでなく、NHK 朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の人気もあって岩手県、特に盛岡市は人で満ち溢れていた。ドラマは現実と虚構が入り混じって描かれているにも拘わらず、ドラマの候補地を巡る熾烈な争いを聞くにつけても、TV の影響が大きいことを実感させられる。
 盛岡市の賑わいから脱出して自動車で国道 4 号を約 1 時間南下すると、北上川両岸に広がる紫波町に達する。町の中心街は右岸に展開しており、JR 紫波中央駅に近い 4 号沿いに勝源院がある。本堂の裏庭に回ると、正に異様な形態をした巨大な物体が目に飛び込んでくる。一般に、巨樹などを探していると、その樹高、巨大さからかなり遠方からでもその存在がわかることが多いが、この「逆ガシワ」は地面にのたうっているかのようなさえ見えるので、近づいて初めてその存在を知ることができる。このカシワは根元で 4 本の分かれた支幹が地面をはうようにのびて立ち上がり、枝をいろいろな方向に伸ばしている。樹高 12.2 m、幹周り約 5 m、枝の広がりは南北 25 m、東西 30 m、根が枝になったように見えることから「逆ガシワ」、別名「みだれカシワ」と呼ばれるようになったと伝えられ、その形態のおもしろさから国指定の天然記念物となっている。寺伝によれば、前九年の役(1051~62年)の勝利した源 頼義・義家親子が戦死者の霊を弔うために庵を建て、源氏の勝利にちなんで勝源庵と名付けて、庭にカシワを植えたことが始まりであるという。このことから、推定樹齢は約 950 年とされるが、看板には約 300 年とあることから判断すると、2 ~ 3 代目のカシワであろうか。樹木でも単に巨樹、樹齢の古さだけでなく、形態の異様さ、不思議さが評価に値することもあっておもしろい。

           新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2013-12-18 11:04 | 勝源院の逆ガシワ