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本郷弓町のクス -東京都文京区本郷-

東京都23区にも案外巨木・名木が残されている。筆者も、学生時代にすぐ傍を通行していたにもかかわらず、その存在すら知らなかったものもある。

 営団丸ノ内線本郷三丁目駅を出てすぐ西の一角に、「弓町の大クス」とか「楠亭の大クス」と呼ばれている堂々たるクスがある。現在、根元近くまで舗装され、西側に高いマンションが建っているが、衰えは全く見られず成長を続けている。ビルに囲まれ日射を制限されているにもかかわらず、生育を続ける生命力に感嘆を憶えるほどである。マンションの建っているところは、楠木正成の血を引くと伝えられる旗本甲斐庄喜右衛門の屋敷跡で、以前はそれに由来する楠亭というフランス料理店があった。現在、その楠亭は、西側のマンション一階に入っている。弓町の名称は、江戸時代に御弓組同心の屋敷があったことに由来し、明治5年には本郷弓町となったが、現在は弓町の名前は消えてしまったとのことである。明治時代に書かれた「東京名所図絵」にも、弓町には老楠樹があると紹介され、その頃から存在はよく知られていたことがわかる。

 司馬遼太郎も1991年にこの地を訪れ、『街道を行く』の中で、このクスノキについて一樹で森を思わせるほどの大木であると書いている。クスノキの樹髙は約20 m、幹周り8.4 m、推定樹齢600 年とされているが、国、東京都などの天然記念物の指定は受けていない。根元は少し高くなって、周辺に立ち入らないように柵が施されているが、大都会の真ん中で生育を続ける大木に改めて驚き、その存在感に敬意を表したいと思う。
新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2011-11-11 17:09 | 本郷弓町のクス