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府馬の大クス -千葉県香取市-

 千葉県は京都府、大阪府、沖縄県とともに標高1,000 m を超える山地がないだけでなく、標高 500 m を超える山地もない唯一の県である(最高峰、愛宕山 408 m)。房総半島の南端には標高の低い山地や丘陵があるが、北部はほとんどが下総台地と呼ばれる約 12.5 万年前に造られた海成面からなる平坦な台地である。

 府馬の大クスは、標高40 m の下総台地の一端にあり、古くから「府馬の大楠」あるいは「山ノ堆の大楠」と呼ばれ、当地域随一の巨木として親しまれてきた。この木はクスノキとして国指定の天然記念物とされているが、1969年の本田正次博士(文化財審議専門委員)の調査で、クスノキではなく、実はタブノキであることが明らかにされた。この地方では、タブノキのことをイヌグスと呼び、クスノキを本グスとか、樟脳グスと呼んでいるため、種名を間違えてクスノキとして告示されたものと考えられいる。このタブノキは宇賀神社の入口の右側に大きく枝を広げ、数本の巨木とともに境内全域に大きな陰をつくりだしている。根は地面から盛り上がっており、生長に伴い根元にある石の祠に食い込んでいる。祠には正徳元(1711)年の銘があることから、約300年をかけて祠をを抱え込んだことになる。樹髙16 m、推定樹齢1,300~1,500 年、根周り約27.5 m、幹周り約 15 m、枝張りは南西に 15 m、北方に 13 m に及んでいる。なお、北側約 7 m 離れたところに「小グス」と呼ばれるタブノキがあるが、これは元来、大グスの枝が地上に垂れて根を張り、生長したものである。そのようすは、江戸時代後期に出された『下総名勝図絵』に描かれているが、つながっていた枝は明治末期に枯れてしまったとのことである。

 宇賀神社の位置する付近は、弥生~奈良時代にかけての住居跡が見つかり、さらに山ノ下城跡の一部とされ、すぐ南西には府馬城跡がある。鎌倉時代末期に千葉一族の府馬(賦馬)氏が城を築き、16世紀半ばに近隣の豪族との戦いに敗れるまで続いたという。大クスは、2003年度からの樹勢回復工事と周辺の環境整備事業が行われ、地元住民によって大切に守られている。

新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2011-02-18 10:29 | 府馬の大クス