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多和目のカゴノキ -埼玉県坂戸市-

 埼玉県中部に位置する坂戸は東武東上線(1916年)と東武越生線(1932年)の開通により、住宅地化が進んだ。とくに、坂戸市は、1960年代後半から工場、大学などが進出し、首都圏のベッドタウンとして人口が急増、1976年坂戸町が三芳野、勝呂、入西、大家の4村と合併して、市制を施行した。坂戸市の人口は、2010年現在で約10万を数える。市域は入間台地(約5万年前ころに河成層として堆積)の末端に位置し、湧水にも恵まれ、条里制の遺構も見つかっていることから、開発時期は早かったと考えられる。

カゴノキは坂戸の中心街から日高へ向かう県道日高川島線沿いの多和田集落の天神社境内に立っている。社殿はずいぶんひなびているが、その東隣に生育しているカゴノキは「鹿子の木」と書くように、樹皮に鹿の表皮のようにまだら模様が認められ、その異様さに驚かされる。この木は看板によれば、正式名称が判明するまで「なんじゃもんじゃの木」とか「鹿の子木」とも呼ばれていたと言われる。埼玉大学永野教授の鑑定(1984年)によれば、この木はクスノキの仲間でまだら模様があるのは珍しいとのことである。カゴノキは暖地性の常緑喬木で、元来沖縄、九州、四国に分布し、関東以北にはほとんど分布していないので、この樹木は植生地理的にも貴重とされる。 樹髙15 m、幹周り 4.6 m、推定樹齢1,000年(樹木医によると、800年とされる)、市指定の天然記念物である。根元から高さ2 mくらいまでにやや大きめの空洞が認められるが、樹勢にそれほどの衰えは感じられない。しかし、早晩、空洞に対する手当が必要になるだろうと考えられる。

 坂戸市はこれといった特徴はないが、県都さいたま市よりも東上線を利用すれば東京都心へのアクセスが容易であり、想定される自然災害もほとんどない優れた住宅環境を持っている。関越自動車道の鶴ヶ島ICも近いので、今後も東京都の衛星都市として発展を続けるであろう。
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新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2010-12-16 17:20