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薬照寺の大カツラ ~南魚沼市~

 新潟県南部に位置する六日町盆地は、日本有数の豪雪地域の一つである。信濃川の一大支流、魚野川沿いに広がる六日町盆地は、越後山脈と魚沼丘陵に挟まれた北北東-南南西方向に細長く続く低地である。盆地底からわずか約 10 kmのところに標高1800~2,000 mの 越後山脈がそびえており、松本盆地から飛騨山脈を眺めるよりも距離が近いので、その存在感は圧倒的である。

 南魚沼市君沢は魚沼丘陵と盆地の境界に位置する集落である。その集落からおよそ40段(高さ約8~10 m)の急な石段を登った平坦な地形には、真言宗薬照寺・庫裏などが建ち、本堂の背後には、JR上越本線が走っている。本堂前にカツラの大木(雄株)が立っており、樹髙33 m、幹周り13.5 m 、枝張り東西15 m、南北25 m、県指定天然記念物である。この薬照寺は安永9(1780)年に火災に遭い、本堂を全焼、その際、カツラの大木も少し被害を受けたと言う。そこでカツラの主幹を伐採して、本堂再建の材木として用いた。主幹からとれた板は、厚さ4.5 cm、幅2.1 m、長さ18.4 m で、本堂の縁側に使用されたと伝えられている。現在の幹は、火災の後に芽生えしたものが大きく成長したもので、昔の主幹を守るように株立ちになっている。このように、火災に遭っているにも関わらず、1991年の環境庁調査によればカツラとしては全国第4位の巨木である。主幹を伐採しなければもっと大木になったであろうと考えると残念である。地元では、このカツラの葉が完全に散ると、雪が降って本格的な冬が到来すると言われる。2008年はカツラの葉も散って12月中旬だというのに、盆地にはまだ全く積雪がない。

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 薬照寺本堂に達する石段は、魚沼丘陵と六日町盆地を境する、六日町断層(石打断層とも言われる)の活動によって変位した地形に造られている。薬照寺本堂が位置する平坦面は約1~0.5 万年に魚野川が形成した段丘面と考えられているので、それ以降に活動(大地震)して約8~10 m の変位を生じたというのは、かなり活動度が高いことになる(金、2001)。2004年の新潟県中越地震は、この六日町断層の北部が活動したという考えが有力である。薬照寺前庭からの八海山、巻機山、金城山の眺めはすばらしい。

 新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2008-12-17 09:05 | 薬照寺の大カツラ