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根尾谷の淡墨桜(うすずみざくら) ~岐阜県本巣市根尾~

岐阜・福井県境に位置する能郷白山(1617 m)の東から流れ出す根尾川は、両白山地を侵食し、大垣市の北方で揖斐川に流入する。根尾川上・中流は中・古生界のチャ-ト・砂岩・頁岩を流れる清流で、小規模ながら河成段丘面が連続して分布する。
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 「淡墨桜」は、旧根尾村板所字上段(標高204 m)、地形的には根尾川中流右岸の山地と中位河成段丘面との境界付近に生育している。樹種はエドヒガン、樹髙17.3 m、幹周り 9.2 m、推定樹齢 1500 年、国指定天然記念物である。蕾のときは薄いピンク色、満開時には白色、散り際には淡い墨を引いたような色になることから、この名前が付けられたと言われる。このサクラは、幼少期にこの根尾谷に隠れ住んでいた継体天皇が、都へ戻られるときに、世話になった村人たちとの別れを惜しまれ、記念に植えられたものと伝えられている。その際「身の代と遺す桜は薄住よ 千代に其の名を栄盛へ止むる」と詠まれたもので、自分の代わりに残していく桜の薄住みが、村と共に末永く栄えるようにという意味である。ところが、サクラは千数百年に渡って生き続けてきたので、大正初期の大雪で太さ4 m の一の枝が折れて、本幹に亀裂が生じた頃から衰えが見せ始めた。その後、昭和23年頃には枯死寸前となったので、根継ぎなどの回生、腐朽部の除去、施肥、殺菌剤散布、支柱の設置、柵をつくって根元への立ち入り禁止など多くの対策がなされた。こうして、多数の人々の努力によって、ようやくサクラはよみがえったのである。現在は淡墨桜周辺は淡墨公園として整備されており、花見シ-ズンには広い駐車場も一杯になるほどの賑わいをみせる。このサクラは、東の横綱「滝桜」(2007年5月に紹介)に対して、西の横綱と言われる。

 根尾谷は1891(明治24)年10月28日に、この付近を震源とする日本最大の歴史地震(濃尾地震、M=8.0)が発生したことで知られる。地震の震源は浅く、震動は激震(震度=7)であったので、14万戸を超える建物が倒壊し、7000人を超える人々が犠牲となった。この地震によって水鳥地区には上下に6 m、長さ1 km に及ぶ断層崖が出現、国の特別天然記念物に指定されている。そこには、濃尾地震100周年の記念事業の一つとして、地震断層観察館が建てられたので、「淡墨桜」観賞の帰りに是非見学して欲しい。

新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2008-04-16 09:52 | 根尾谷の淡墨桜