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 愛染カツラ ~長野県別所温泉~

長野県中央部の北東寄り、千曲川中流に広がる地域は上田盆地と呼ばれる。
千曲川右岸の上田市街地付近は千曲川が造りあげた、数段の高さを異にする段丘地形からなるのに対して、南西部は塩田平と呼ばれる平坦な土地である。塩田平の平坦さは、地下の地質調査によれば、数10万年前と10万年前以降にそれぞれ湖が形成されたときに堆積した粘土層が確認されているので、それ以降に周辺の山地から流れ出す河川によって埋積されたことによる。

別所温泉は夫神岳(1,250 m)および女神岳(927m)の山麓、湯川が塩田平へ流れ出す付近に位置する非常に歴史の古い温泉である。別所温泉を代表する観光スポット、北向観音堂は長野善光寺に対面するように建てられており、古来、南面する善光寺と両方に参詣する必要があると伝えられる。湯川左岸から橋を渡り両側に土産物屋が並ぶ参道を歩き、急な石段を登ると北向観音堂に達する。

愛染カツラは観音堂の境内、愛染明王堂の隣にそびえ、古くから縁結びの霊木として知られている。樹髙 22 m、幹周り5.5 m、樹齢は不明、上田市指定の天然記念物である。カツラの大きなものは根元から分かれることが多いが、この木はそういうことはない。なお、川口松太郎は1935年『鶴八鶴次郎』で第一回直木賞を受賞した数年後に、この木と愛染明王堂にヒントを得て、『愛染桂』を書き、1938年にそれが「愛染かつら」として映画化され、その主題歌と共に大ヒットしたが、それから長い年月が流れた。

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別所温泉には国宝安楽寺八角三重塔、常楽寺(観音堂の本坊)、塩田平には生島足島神社、塩野神社、前山寺、中禅寺、竜光院などがあり、鎌倉時代の文化財が多いことから「信州の鎌倉」と言われる。別所温泉には近代化されたホテルは少なく、木造の旅館が建ち並ぶゆったりとした空間が広がる。別所温泉周辺の山々は、信州一のマツタケの産地でもある。

新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2007-08-24 11:05 | 愛染カツラ