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囀石(しやべりいし)のモミ ~群馬県中之条町~

 群馬県北部の中之条盆地にはいろいろな樹種の巨木が残されており、「巨木の郷」の呼称すらある。盆地の中心に位置する中之条町は、吾妻川が形成したおよそ7段に区分される河成段丘面のうち下位の段丘面に市街地が展開している。このような河成段丘面の形成は、上流に位置する草津白根山、浅間山だけでなく、盆地南部に位置する榛名山などの火山活動が関わってきた。最高位の蓑原面(標高560~600 m)は中期更新世に存在した古中之条湖に堆積した湖成層(厚さ 200 m 以上)から形成されている。その年代は、長野県境に位置する四阿火山(2354 m)噴出した火山灰を手がかりとして、約30万年前と推定されている。その後、吾妻川が侵食しながら河床を低下させ、数段の河成段丘を造りあげた。中之条町の中心市街地が位置する段丘面は、浅間火山に由来する噴出物との関係から約2万年前以降に形成されたことが分かっている。

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 この中之条町市街地から旧新治村へ通ずる県道を自動車で約20分登ると、囀石集落に達する。囀石集落は背後の山地斜面からの崩落物質が堆積することによって形成された緩斜面に数軒の家々が散在する。県道から家々に達する細い道路を登ると一軒の家の前の南向き斜面に堂々としたモミの木がそびえている。所在地は、中之条町大道 246、標高約 790 m である。

 木はあまりに大きく、撮影場所が限られておりむずかしい。看板によると、樹髙37 m 、幹周り7.6 m、推定樹齢800年、町指定の天然記念物であり、このような場所に立派な木が残されたことに感動を覚える。木の根元には、祠が祀られており、幹の裏側(家側)に回ってみると、根元から4~5 m の高さまで空洞になっているが、樹勢に衰えは感じられない。この木は、そばの看板には日本一と記されているが、1991年の環境庁の調査報告書によれば、モミとしては全国第3位にランクされるとのことである。同じ町内の下沢渡にある「伊賀野のモミ」は、樹髙36 m、幹周り6.3 m、樹齢不明で、全国第4位の巨木と言われる。
中之条町の北部には、草津、伊香保と共に上毛三名湯と言われる四万温泉もあるので、名木巡りと一緒に楽しみたい。

新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
  
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by meiboku | 2007-12-21 15:02 | 囀石のモミ