カテゴリ:鳥居杉( 1 )

 

鳥居杉 -新潟県糸魚川市ー

 飛騨山脈北端は親不知・子不知の険で急激に日本海に没入する。この親不知・子不知海岸は、昔も今も新潟県と富山県の大きな障壁となっており、それゆえに両県の地形・地質的な違いだけでなく、社会的・文化的な違いを生み出してきた。松尾芭蕉も「奥の細道」で、この難所の通過をクライマックスとして描いているように、いかにして無事通過するかであったと思われる。 新潟県西端に当たる糸魚川市(旧青海町)上路地域は、地形・地質から言えば、西南日本の特徴を持っているので富山県に属してもよいのであろうが、室町時代から越後国頸城郡の地名として登場してきた。この上路は、親不知・子不知の難所を避けるために、富山県との境を流れる境川沿いに上路に達し、橋立を経て青海に達することもあったと伝えられる。
 この上路集落の南東に白鳥山(1286.9 m)が聳えている。白鳥山には、坂田峠からさわがに山岳会が開いた栂海新道か、山頂のほぼ北まで達する林道を利用すれば、いずれも短時間で登頂できる。後者の登山道を利用すると、標高 800 m 付近に山姥ノ洞に達する。山姥ノ洞は巨岩に空いた幅 2 m、高さ 2.5 m の小さな穴というよりは、白亜紀手取層群(泥岩・砂岩・礫岩)の節理にすぎないが、山姥の伝説で知られ、それをもとに世阿弥が謡曲「山姥」を作ったと伝えられる。
 そこから古い地すべり地形の滑落崖を登ると、傾斜が緩くなり1,060 m の山稜となり、
その登山道沿いに曲がりくねった鳥居杉が見られる。幹は根元から地面に這うように伸び、高さ約 1.5 mから上方に向かっており、目測で樹高10 m、幹周り2 m程度と驚くような巨木ではないが、以前に紹介した天然スギの原生林(新潟県佐渡北部)や洞杉群(富山県魚津市)と同様に豪雪によって直立した樹形になれなかったと思われる。佐渡や魚津のそれはダメージを受けた多くの巨木群が見られたが、ここでは鳥居杉のみであった。それだけ、この付近のほうが厳しい環境と考えられ、、鳥居杉だけがたまたま生育できたのかも知れない。なお、2.5 万分の 1 地形図にも、鳥居杉の名称が記入されていることから、古くから山姥ノ洞や白鳥山を訪れる人たちにとっては知られた存在であったと思われる。
                       新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
e0119669_14354294.jpg

[PR]

by meiboku | 2014-02-18 14:36 | 鳥居杉