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村雨の松 -新潟県佐渡市-

 新潟市から佐渡島は約30 kmしか離れていない。佐渡島は、新潟海岸から余程の天候でない限り望むことができるが、佐渡の動植物が越後のそれと大きく異なっているのはなぜであろうか。それは佐渡と新潟市を隔てる佐渡海峡は深さが水深200mを超えていることから考えて、更新世(約260 万~1万年前)における氷河性海面変化の影響を受けることなく、新第三紀末期には佐渡と越後とはすでに分離しており、動植物はそれぞれ固有の進化を遂げたことによると考えられる。

 新潟港からカ-フェリ-で約2時間半、ジェットフォイルを利用すれば約1時間で佐渡・両津に着く。両津港タ-ミナルを出て北方を見ると、加茂湖の湖口北側に建物に挟まれて高い木が見える。これが村雨の松であり、タ-ミナルから歩いても約5分である。村雨の松は、両津湾を閉塞し、加茂湖を誕生させた砂州に生育したことになる。かって筆者らは加茂湖周辺で掘削調査を行い、年代試料、花粉・珪藻分析をもとに湖の誕生・消滅を調べたことがある。それによると砂州の発達によって両津湾を閉塞することは繰り返されたが、大佐渡および小佐渡から成長した砂州によって今日のような加茂湖が誕生したのはおよそ1,800年前頃ということが明らかとなった。両津の名称は、この砂州に発達した夷町と湊町という2つの津(港)が、明治34年に合併したことに由来する。

 村雨の松の樹種はクロマツで、樹髙16 m、幹周り 6 m、推定樹齢300 年、驚くような巨木ではないが、県指定の天然記念物である。この木の名称は、ここに江戸時代に番所があったので、「御番所の松」とも呼ばれていたが、明治の文豪・尾崎紅葉が当時の海岸線近くにあって波しぶきに濡れるもを見て、「村雨に濡れる風情あり」といったことによると伝えられる。ところが、1990年の台風19号によって、根元からやや上で2 本に分かれていた支幹が被害を受けて衰弱したために、片方の支幹を切ってしまったとのことである。現在は、その後の手厚い手当で順調に勢いを回復している。当地は両津埠頭に近いので、佐渡汽船乗船の時間調整に訪れてみたらいかがであろうか。

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新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2011-06-30 10:00 | 村雨の松