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大久保のナツグミ -群馬県中之条町-

 これまで何回か紹介した群馬県吾妻郡中之条町には、他地域に比べて、多くの巨木、名木が残されているが、それは何故であろうか。山地・丘陵・台地(段丘)に比べて、海岸平野、河成平野などの完新世低地は形成年代が新しい上に、開発に伴って樹木が伐採された可能性が考えられる。中之条町は、吾妻川沿いに発達しており、河成平野はほとんどなく、平坦な段丘面に集落が造られ、高位段丘面の崖や背後の丘陵・山地にはそれほど開発の手が延びていない。それは、中之条町に残された巨木の大半が、段丘崖・丘陵・山地斜面に見られることからも裏付けられる。 

 中之条盆地に見られる河成段丘面は、古い順に蓑原(みのはら)面(約30万年前)、成田原面(約10万年前)、中之条面(約3万年前)、伊勢町面群(約2万年前以降)に分類される。最高位の蓑原面(標高560-600 m)は中期更新世に存在した古中之条湖と呼ばれる湖成層からなり、その堆積層の厚さは200 m以上に達する。何故、古中之条湖が造られたかは、下流側に存在したと推定される榛名火山の活動に伴う堰止めによると考えられるが、現在、いずれの時代の噴出物によるかはわかっていない。中之条中心街の位置する中之条面からほぼ北西方向に成田原面を経て、蓑原面に登ると、蓑原面と嵩山との間に胡桃沢川が流れている。所々に立つ標識に従って、胡桃沢川左岸の狭い道を登ると堀口家に達する。その堀口家の裏の山地斜面にグミの木の主幹がはうように生育している。看板によれば、1981年8月の台風10号の強風によって横倒しになってしまったので、県教育委員会の指導を受けて、土留めをし、浮き上がった根元に土をかけ、支柱を立てて保護した結果、このような形態になったという。樹髙は 10 m、幹周り 2.5 m、推定樹齢300 年、県指定の天然記念物であるが、このようなグミの巨木は珍しいとされる。樹形は変わってしまったが、樹勢は旺盛、初夏には赤い実をたくさんつけるので、「田植えグミ」とも呼ばれている。

このナツグミのように予想外のところに、変わった形態を保ちながら、元気に生育しているのに驚かされる。
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新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2010-09-24 10:48 | 大久保のナツグミ