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洞杉群(どうすぎぐん) -富山県魚津市-

 富山県には立山杉で代表されるように、各地に杉の巨木が残されている。前月に続いて、杉を紹介することにしたのは、一般に、杉と言えば直立した、堂々としたものをイメ-ジするのに対して、今回の杉は樹形に大きな特徴があるからである。

 魚津市北部で日本海に流入する片貝川を上流に向かって自動車を走らせると、最後の集落・東蔵を過ぎるころから幅の狭い渓谷となる。南又谷の清流沿いの幅の狭い林道に注意しながら進むと、「洞杉巨木群」の案内板が建ち、猫又谷と土倉谷の合流点付近に架かる橋の手前で車を止める。橋のすぐ先に、奇妙な形をした杉の巨木と造られたばかりの遊歩道入口がある。「洞杉」とは、片貝川上流標高500~700 mのところにに自生する杉の通称で、幹の内部が腐り、空洞になったものが多いことから呼ばれるようになったと言われる。洞杉の存在が知られるようになったのは、1989年に片貝川上流における発電所建設に際して調査がなされてからである。近年、マスコミにその存在が知られるようになり、関心を集めるようになった。筆者も2年前に、朝日新聞日曜版に掲載された記事と写真などで、その樹形のおもしろさを知った。

 遊歩道に入ると、崩落した岩塊からなる傾斜地に曲がりくねった杉の巨木が生育しており、決して同じ樹形のもは見られないほど、それぞれが個性的である。根元に大きな岩を抱いたものや、地上2~3 m のところで幹が分かれたものなど、自然が造りあげたおもしろさに驚かされる。最大のものは、株立ち(幹4本)の幹周り合計30.18 m、その4本のうちもっとも太い主幹の周囲は12.05 m(2004年6月計測)、推定樹齢約500年である。岩塊からなる傾斜地であるために、表層土壌はほとんど発達しておらず、岩の間に根を伸ばしており、驚くような太さをもった木ではないが、厳しい自然と闘っているようすに生命力を感じることができる。遊歩道は約300 m、ゆっくり観察しながら歩いても約20分、何となく圧倒されて林道に戻る。洞杉がこのような形態となったのは、何と言っても、豪雪地域であり、岩塊からなる傾斜地であることが、直立した樹形にはなれなかった最大の要因と考えられる。現在までに、この地域で確認されている洞杉は約120 本とのことであるが、調査が進めばもう少し増えるものと考えられる。洞杉の存在が知られるようになったので、日本各地の巨木と同じように、どのように保護するか、あるいは観光化するかなどについては多くの考えがある。

新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2010-02-22 10:34 | 洞杉群