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来宮神社の大クス-静岡県熱海市-

 静岡県熱海市は日本でもっともよく知られた温泉観光都市である。熱海の語源は「あつうみ」の意味で、湧出した温泉で海水が熱くなったという伝承に由来する。『湯前(ゆぜん)神社縁起』や『走湯山(そうとうさん)縁起』などによれば、すでに奈良・平安時代には温泉が湧き出ていたと言われる。伊豆半島東部には南から宇佐美火山、多賀火山、湯河原火山とほぼ直線状に並び、その北端に箱根火山が位置している。火山活動は今から約70万年前に宇佐美火山からはじまって、活動の中心は北に移り、最後にもっとも大きな箱根火山が活動したと言われている。熱海温泉は湯河原火山の南部に位置している。熱海市街地は広義の湯河原火山が構成する山地斜面とそこから流れ出す初川、糸川と和田川沿いの狭い谷底に広がっている。したがって、JR熱海駅から海岸に達するにはかなりの急坂を降りなくてはならない。

 JR来宮駅から糸川沿いに北へ少し向かうと、狭い谷底に建てられた来宮神社に達する。その神社本殿の裏手に当たる、糸川寄りに大クスが立っている。太い根は盛り上がって波打っており、樹木というよりは巨大な岩のようにさえ見える。樹髙25 m、幹周り23.9 m、推定樹齢2,000年、国指定天然記念物である。主幹は根元から2本に分かれ、北側の幹は幹周りが約13 mで、地上数 mのところから何本かの枝に分けて勢いよく成長を続けている。南側の幹は幹周り8.5 m であるが、1974年の台風によって残念ながら地上から約5 mのところで倒れてしまい、現在はトタン板で覆われている。
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 言い伝えによれば、昔、ある漁師の網に神像のように見える大きな根株がかかり、浜の松の根元に安置したところ、その漁師の夢枕に神様が現れ、「西方の山地にクスの大木があるから、その地に祠を建て、根株を祀れば、この地方は永く栄えるであろう」と告げたという。そこで、漁師は根株を「木宮」と名付けて祀ったと言われ、これが来宮神社の発祥とされている。なお、来宮神社の大クスを一周すると、寿命が1年延びるという言い伝えがあるとのことである。この大クスは、鹿児島県の蒲生の大クス、佐賀県の武雄の大クスとともに日本三大クスに挙げられている。

  新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2009-05-20 09:43 | 来宮神社の大クス