カテゴリ:中之条サイカチ( 1 )

 

中之条のサイカチ -群馬県中之条町-

 今冬は記録的な暖冬であったと言われ、サクラの開花も例年より約10日早く始まったという。3月になって、新潟でもどんよりした空から青空へと変わり、季節の推移を実感できるようになる。

 群馬県中之条町は渋川市で利根川に合流する吾妻川沿いに展開する段丘の町である。段丘地形という地形的制約もあり、国道をはじめとする道路、JR吾妻線などが狭い吾妻川沿いに限定されるので、中心市街地は何となく安定感に欠けるように思われる。
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 サイカチの巨木は、JR吾妻線の市城駅から徒歩2分、交通量の多い国道353号沿いの人家(狩野利喜雄氏)脇の狭いところに立っている。主幹に空洞はみられるが、樹勢は旺盛で地上から 3 m 付近で二股に分かれ、堂々とした姿を誇っている。国道が屈曲しているうえに、交通量が多いのでゆっくり観賞することはできないのが残念である。樹髙14 m、幹周り5.4 m、推定樹齢500年以上とされ、傍の説明板によれば日本一と書かれている。木の立っているところは、吾妻川の現河床からかなり高さがあるが、1742(寬保2)年に発生した吾妻川の大水害で根元を濁流で洗われたという。ところが、見事に立ち直り、それ以降、狩野家の鬼門除けの木になっている。この木は、中之条かるたに「風雪に耐えてサイカチ日本一」と詠われている。
 なお、サイカチの果実はサポニンを多く含むところから、昔は馬の体を洗うのによく使われたと言われる。平安中期の延喜式によれば、この付近は馬の産地として知られ、朝廷の牧場が存在したと伝えられているので、このサイカチはそれらの子孫であろうか。

 吾妻川は草津白根山東斜面から流れ出す強酸性の白砂川が長野原町で流入するため、それより下流では魚類も生息できない死の河川で、河原の石ころも茶褐色となっていた。ところが、上流に中和工場と石灰沈殿用の品木ダム(1965年)が造られてから、河川は生き返った。渋川市から中之条町、長野原町を経て、草津温泉や鳥居峠への道路は屈曲しているが、吾妻峡付近は渓谷の美しさだけでなく新緑、紅葉もすばらしい。

 新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2009-03-18 16:53 | 中之条サイカチ