カテゴリ:治郎兵衛のイチイ( 1 )

 

治郎兵衛(じろべい)のイチイ ~岐阜県高山市荘川町~

高山市は大野郡久々野町、丹生川・清見・宮・朝日・高根・荘川村、吉城郡で奥飛騨温泉郷のある上宝村、国府町との平成の大合併によって、東京都にほぼ匹敵する面積となり、北海道の足寄町を抜いて日本一となった(2,177.67 km2、人口95,789=2007. 8. 1)。

 富山湾に流入する庄川の最上流に位置する旧荘川村は高山市と合併し、下流に位置し、合掌造りの民家が残り、世界文化遺産に指定された白川村はそのまま存続する道を選んだ。
 「治郎兵衛のイチイ」(雄株)は、庄川の支流である三谷川左岸、旧荘川村惣則字前畑、標高870 mにある。木は山地下部の傾斜地(小型扇状地)に家々を見下ろすように生育しており、木の根元には鈴木家(屋号、治郎兵衛)の墓が建っている。樹木は斜面下方へ幾分傾き、樹髙は約15 m とそれほど高くはないが、幹周りは約 8 m と太く、枝張りは東西、南北とも約 13 m で堂々としている。推定樹齢2000年、国指定天然記念物で、1991年の環境庁の調査報告「日本の巨樹・巨木林」によって、日本最大のイチイであることがわかった。なお、前畑の集落内には、見学者のための広い駐車場が用意され、イチイの樹勢保護のために、見学者が根元を踏まないように簡単な柵も作られている。一位細工で知られた高山市に、日本一のイチイの巨樹が残されているのは嬉しい。「治郎兵衛のイチイ」から庄川沿いに白川村へ向かえば、御母衣湖沿いに「荘川桜」も観られるので、桜の開花時に合わせて見学するのがよいかもしれない。
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 白川郷は交通機関が未整備な時代は秘境と言われ、庄川下流の富山県旧上平村・旧平村五箇山(=南砺市)にかけては合掌造りの民家も多数残されてきた。ところが、現在では一部が未開通であるものの、東海北陸道の建設が急速に進み、アクセスがきわめて容易となった。現在では自動車を利用すれば、名古屋、場合によっては京阪神からでも高山市、白川郷への旅は日帰りでも可能となった。そのために、かつての白川郷、五箇山のように時間をかけて、ようやく到達できたという旅の楽しみはなくなり、静寂さは失われ、単に短時間寄るだけの通過型の観光地となりつつある。せめて、観光客の少ない時期に、合掌造りの民宿などにゆっくり泊まって、昔の時間の流れを想い出して欲しい。

新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2008-03-12 15:19 | 治郎兵衛のイチイ