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若宮八幡神社の杉とトチの双生樹 ~岐阜県飛騨市~

 岐阜県最北部に位置する飛騨市は、2004年に人口最多の古川町を中核として、隣接する神岡町、河合村、宮川村と合併して成立した。今回の樹木は、この旧古川町の北方に位置する旧宮川村大無雁の若宮八幡神社境内にある。

高山盆地から流れ出す宮川は古川盆地を経ると、富山県境をなす山地を侵食して深い谷を形成する。高山本線、国道360号は宮川沿いをほぼ走るが、富山と高山市を結ぶ主要国道41号は古川盆地北部から数河を経て高原川流域を走るようになる。高山本線の角川駅、大無雁集落などから一段高い宮川右岸の段丘面の縁近くに、若宮八幡神社のひなびた社が建っている。樹木は神社から少し離れたところに位置しており、高さ約20 mの段丘崖上部に立っているので、藪がひどく近寄ることはむずかしいが、杉とトチノキが根元で合着し、地上 1 m 付近で二股になってのびているのが珍しい。下側に杉、上側にトチノキが生育しており、樹髙は37 m、根周り10 m、推定樹齢800年、県指定の天然記念物である。さらに、本殿横に三本杉、背後に弥栄杉と呼ばれる県指定の天然記念物も見られる。神社本殿付近の杉の巨木は、国道360号を走っていれば、遠くからでもその存在がわかる。
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 この若宮八幡神社から約1 kmには、活動度が高いことで知られた跡津川断層やそれのやや北方を並走する牛首断層が北西-南東方向に走っている。跡津川断層のもっとも新しい活動は、1858年飛越地震(宇佐美、1987ではM=7.0~7.2)とされているので、将来、これらの活断層のどこかで大地震が発生すれば、山地斜面の崩壊だけでなく、とくに宮川や高原川、これらが合流する神通川および庄川下流などの富山平野に大きな被害をもたらすと推定されている。

 旧古川町は高山市の陰に隠れた存在ではあるものの、古い町並がよく残されており、さらにNHKの2002年度上半期の連続ドラマ「さくら」などの舞台となったこともあって、近年では全国区の観光地となった。町中央の瀬戸川沿いには白壁土蔵、古い町並みが保存され、国の重要無形文化財の飛騨古川祭りなど見所一杯である。福王寺跡には、市指定天然記念物の大イチョウ(雄株、樹髙30 m、幹周り5.6 m)も見られる。

  新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫

by meiboku | 2008-10-22 11:19 | 若宮八幡神社の杉とトチの双生樹  

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