堂形のシイノキ -石川県金沢市-

 金沢市は金沢城、兼六園をはじめとする史跡に富み、四季を問わず楽しめる街である。市内には見どころ一杯、いつでも観光客に満ち溢れている。観光業に関わっている人にとっては、全国から人が訪れてほしいと思うであろうが、一般市民にとっては自動車は渋滞し、旅行気分の客が市内をぶらぶらするのは迷惑だと思っているのではないかと考えることがある。観光都市宣言をしている都市の宿命かもしれないが、旅行者は市民に迷惑、不快な気分にさせないような心づかいをしたいといつも思っている。
 金沢城のすぐそば、兼六園(何本かの巨木が残されているが、別の機会に紹介したい)から広坂を下りると百万石通りに面して旧県庁(現石川県政記念しいのき迎賓館)がある。道路の反対側には市役所、金沢21世紀美術館もあり、金沢最大の繁華街・香林坊にも近いので、行政・商業機能からみても市の中心といってもいい。旧県庁にしいのき迎賓館と名付けられているように、建物の入り口前に 2 本の半球状をしたシイノキの巨木が並んで植えられている。両者は国指定の天然記念物、樹齢は不明であるが、入り口に向かって左側のほうが少し大きく、樹高 13 m、幹周り 7.5 m(右側は 7 m) に達する。何故、この場所に、シイノキが植えられたのであろうか。それは、加賀藩 3 代藩主前田利常(1593~1658)の時代の庭園に植えられた樹木であるといういう説と、加賀騒動の主役大槻伝蔵の屋敷からここに移植されたものという説があり、定説はない。旧県庁の跡地の大半は筆者が訪れた2012年 6 月時点で整備中であったが、いずれにしても、市内の中心にこのような巨木が残され、大切に保護されていることに敬意を表したいものである。金沢はやはり時々は訪れ、徒歩でゆっくり楽しみたい魅力に溢れた街である。
新潟大学名誉教授 鈴 木 郁 夫
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by meiboku | 2013-09-19 15:21 | 堂形のシイノキ  

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